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難病の潰瘍性大腸炎に新たな治療法

潰瘍性大腸炎は、30年前には1万人に届かなった病気だったんですが、2016年の患者数は18万人以上と、この20年で5倍以上と右肩上がりで増えています。しかも国が難病と指定する病気です。そんな潰瘍性大腸炎について番組では、ちょうど1年前、去年の4月に取り上げたのですが、ここ1年間で次々と新しい治療が登場してきています。その新たな治療法などを中心に、4月9 日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★改めて潰瘍性大腸炎とは?

症状としては、大腸の粘膜に「炎症」が起きるところから始まり、もっと深い部分までただれてしまう「潰瘍」まで起きる病気です。潰瘍性大腸炎は、幅広い世代の人に起こるのですが、20歳代から40歳代という働き盛りの世代が、発病のピークになっています。初期の症状としては、おなかを下しやすくなります。症状がひどくなると、貧血や体重減少、倦怠感が起きて、お腹の痛みを伴う場合もあります。

★日常生活に支障をきたす

おなかを下すというと、ただお腹が痛いだけと思われがちですが、実はそんなものではないんです。少し悪い程度なら、薬を飲んで、さらにおむつをして、なんとか仕事をこなす、という感じですが、悪化するとさらにひどくなります。仕事はできず、起きて日常生活を送るのも困難になり、のたうちわまり、顔は土気色に変色になって動けなくなるくらい痛いというケースもあります。

★なぜ難病指定されているのか

そんな潰瘍性大腸炎が難病指定されているのは、病気が起きる仕組みがまだ解明されておらず、根本的治療がない病気だからです。ただ、9割の人は、「食事」と「薬」の適切な治療をすると、状態は良くできます。食事は、脂肪や消化の悪いものは避けて体力維持を心がけます。

具体的には、食物繊維を多く含む食品や発酵食品。タンパク質は、脂肪の少ない、白身魚や大豆、卵をとるよう心がけます。そして、薬は、炎症を抑える薬を使っていきます。

以前は薬を飲んでも、オムツは必要、という状況でしたが、ちょっと前に比べると、薬も効果のあるものが出てきています。その際に「アサコール」という薬をご紹介しました。というのが、前回お話した治療薬だったんですが、その薬で画期的なものが出てきたのです。

★新たな治療薬とは

まず紹介するのが、去年9月に製造販売が承認された「ブデソニド」=商品名はレクタブル。重症の場合を除く潰瘍性大腸炎で、お尻の穴から直腸内に直接噴射して使います。これまで直腸内に噴射する薬はあったんですが、課題もありました。

まず、液体の薬のため肛門から漏れて下着に付いてしまう。注入する時に横になる必要がある。1回使い切りのためかさばる、という課題です。一方このレクタブルは泡状の薬なんです。これが最大のポイント。泡状なので腸の管の中で薬を長く保つことができて、投与のあとに肛門から薬の液が漏れにくいのです。さらに立って注入することができて、1缶で一週間使用することができます。1日2回なので、14回分です。

★レクタブルの有用性は?

海外では、2006年にイギリスで最初に承認され、2014年のアメリカなど、去年3月までで、世界36カ国で承認されています。この薬はステロイド薬ということで、薬を使っている間は、患者の病態を十分に観察して、投与開始6週間を目安に薬剤投与の必要性を検討することが必要です。漫然と投与を継続しないことに留意する必要があります。つまり全身への副作用のチェックをしっかり行うことです。こうした注意点を守れば、レクタブルは有用な薬になりのではないかと思います。

★さらに新たな治療法も

続いて紹介するのは、ジーンズを藍色に染める染料を使った治療法です。去年11月慶應義塾大学医学部のグループは、ジーンズを藍色に染める染料が、潰瘍性大腸炎の治療に有効であることを臨床実験で実証したと発表しました。ジーンズが、インディゴによって藍色に染められていることはよく知られていますね。天然のインディゴは、タデ科のアイなどの植物を利用して抽出されるのですが、その粉は「青黛(せいたい)」と呼ばれて、昔から漢方薬として使われてきたのです。

中国では、古くから潰瘍性大腸炎に対して青黛を含む薬が用いられていたのですが、その有効性や安全性に関して十分な科学的検証はなされていませんでした。今回、その検証が行われたというわけです。

研究グループは、中等度以上の潰瘍性大腸炎患者さん86人に対して臨床実験を行いました。患者さんを4つのグループにわけ、1日0・5gの治療薬を服用するグループ、1日1gのグループ、1日2gのグループ、プラセボ=偽薬を服用するグループです。8週間にわたって青黛(せいたい)を服用してもらったのですが、その結果、プラセボのグループは、13・6%であったのに対し、治療薬を飲んだグループは70〜81%という高い有効性を示したのです。

★臨床的に有効という結果が出た

これまでの潰瘍性大腸炎の薬と、異なる仕組みの青黛(せいたい)が患者さんに高い有効性を示したことから、今後、新規の治療薬の開発が期待されます。

ただ一方で、この青黛については、最近、心配な動きが出ています。中国では潰瘍性大腸炎の治療薬として青黛を含む漢方薬が使われてきたという経緯があることから、日本でもインターネット情報や口コミの噂を信じて、民間療法として個人で勝手に服用し、トラブルを起こす人が出てきています。

実際に、おととし、青黛を摂取した潰瘍性大腸炎患者さんが「肺動脈性肺高血圧症」を起こした、という事例が複数あることを厚生労働省が発表しています。これを受けて、保健医療の関連学会に対して患者が自己判断で青黛を摂取しないよう指導を求める通知を出しています。

青黛(せいたい)がダメということではありませんが、他の薬同様、自己判断でを使うことは、リスクを伴います。摂取するときには主治医にしっかり相談することが基本です。

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日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 


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