■ミキサーでゲームの音量を調整して、足音や銃声が聞こえやすいように
前回に引き続き、「マイゲーム・マイライフ」のゲストにやってきた橘柊生さん。ダンスロックバンドDISH//のメンバーで、22歳（宇多丸さんとはなんと二回り以上も年が離れています……！）。
橘さん、ゲーム中の完全防備スタイルが、もはやただの廃人。そこらへんにいる廃人そのものでございました。音に食べ物、飲み物、目の疲れにまで完璧に気を遣ったプレイスタイル。長時間ゲームするために最適化されたこだわりが詰め込まれています。
橘「DJのミキサーを、ゲームのモニターのほうに接続できるようにして、ゲーム用のヘッドホンをミキサーに刺して、PCとPS4を繋げてミキサーで一緒にいじれるようにしているんですよ。以前は、ヘッドホンをしながら、中に通話用のイヤホンをしていたんです」
宇多丸「え、ヘッドホンの中にイヤホンしてたの？（笑）」
橘「そうなんですよ。でも、今はミキサーに繋いでいるから、ヘッドホン1個で」
宇多丸「ああ、音量をミックスして」
橘「あと、ゲームによってハイが強い・ロウが低い、とかあって。足音を聞きたいので、聞こえるようにロウを強めに」
宇多丸「うわーーーーー！ 出た！！！！ 変態ーーーー！！！（笑） 今まで聞いたことないタイプの変態来たーーーーーー！！！！」
橘「ロウ強めで、あとハイもちょっと上げて、銃声が聞こえやすいように、とか。結構いじってますね」
宇多丸「うわー、すごい」
橘「あと、飲み物は絶対にタンブラー。飲み物が冷えないような入れ物に入れるのは絶対です」
宇多丸「なぜなぜ？」
橘「やっぱりスポーツなので、ゲームは。やってたらめちゃくちゃ汗かくじゃないですか。あと、ゲーム用のモニターが2台並んでて、PCとPS4がついているんで、いかんせん機械の熱がすごくて（笑）。部屋に熱がめちゃくちゃこもるんですよ。だからタンブラーの中に冷たい飲み物を」
宇多丸「え、でも、2画面同時進行とかさすがにできないでしょ？」
橘「PCのほうですぐゲームの攻略を調べられるようにしたり、あと、通話用にひとつ立ち上げてて、そっちのマイクを引っ張ってきて」
宇多丸「ちょっとしたデイトレーダーのような（笑）。食べ物はどうですか？」
橘「甘いものとポテチと、ずっと口に入れられている昆布系のしょっぱいものは絶対にあります。甘いものはアーモンドチョコとか」
宇多丸「チョコは糖分をね」
橘「結構、頭が疲れてくるので」
宇多丸「やっぱりアスリート的な発想なんだ（笑）。できるだけ長くいけるように」
橘「あと、目薬と」
宇多丸「ははははは！ 意外と出てこなかった！ 目薬！」
橘「眼鏡は、今日もかけてきてるんですけど、ブルーライトをカットする眼鏡を。朝までゲームするときは絶対これかけてやります」
この隙のないスタイルに圧倒されながらも、特に宇多丸さんの琴線に触れたのはミキサー。果たしてミキサーを使って音を調整してまでゲームをしている人は世の中にどれくらいいるのでしょう。どう見てもプロの犯行です。
宇多丸「これ今まで出てこなかった視点だわー。しかも音楽グループやってらっしゃるってことで、DJやっているっていうのも一致してますものね。でも、そういうためのものじゃないですけど（笑）」
橘「ミキサー側もたぶん、ゲームの音を上げるために生まれてきたんじゃねえぞって思ってますよね（笑）」
恐ろしいのは、橘さんの若さ溢れる爽やかな喋り方のおかげで、廃人感がまったく漂ってこないところ。文字を羅列すると、廃人のそれでしかないのですが、元気いっぱいに、無垢な雰囲気で喋る橘さんの話を聞いていると、「おっ、最近の若い子はそんな感じでゲームするんだな！」と一瞬スルーしてしまいがち。でも、たぶん、そうじゃないです。こんな完全防備でゲームするのって、ゲーマーの中でも相当レベルが高いはず。喋り方でこんなにも受け取る印象って変わるんだなあ……。
■今回のピックアップ・フレーズ
橘「仕事でアクションシーンをやることになったときに、昔から銃を使うゲームをやっていたことが全部活かせたんですよ。銃を持っているときの歩き方とか構え方、立ち振る舞いとか、どこで壁に隠れて、どういうタイミングで出ていくか、とか、そういうのが。しかも、たまたまゾンビをアクションシーンで」
宇多丸「ああ、まさに。じゃあ、監督からも上手いねえって？」
橘「そうですね。おお、いいねえ、って」
宇多丸「ずっとシミュレート繰り返してきてるから（笑）」
文／朝井麻由美（ライター、コラムニスト）