いま、ビタミンDは世界的に注目され、論文も多く出てきています。なかにはビタミンDの摂り方1つでがんのリスクを下げられるという研究も出てきています。ただ、残念なことに日本人はこのビタミンDが足りないんじゃないかという話も同時に出てきています。ということで、このビタミンDについて、先日、女子栄養大学の上西一弘教授にお話を聞いてきたので、ビタミンDのすごさとその補給の仕方について7月2日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。
★ビタミンDが注目されるワケ
ビタミンDの注目度は世界で発表される論文の数でも明らかです。2000年に入ってから論文が増え始め、2009年からは急増するようになりました。2000年ごろまでは、1年で1000本程度だったんですが、今や年間4500本に迫る勢いです。
なぜ増えてきたのかというと、ビタミンDの新たな効果が次々と見つかってきたからです。もともと、ビタミンDは、カルシウムやリンなどのミネラルの代謝や恒常性の維持、骨の代謝に関係していることが分かっていました。そのため昔は、ほとんどが「骨とカルシウム」についての研究論文でした。
ただ、近年では、骨だけではなく、ビタミンDが「身体のいろんなところに作用している」ということがわかってきました。そのため、いろんな病気をビタミンDが抑えてくれる、という論文が急激に増えているんです。
★ビタミンDは何に効くのか?
まずは「血管」です。「血管」でビタミンDが吸収されると動脈硬化や血管の石灰化を抑制する 可能性があるという論文がいくつも発表されています。また血液中のビタミンDの濃度が高いと心筋梗塞や脳梗塞などの疾患リスク、死亡リスクが低下するというデータもあります。さらに、血圧で見ると、高血圧の人がビタミンDを摂ると、 最高血圧だけが下がったというデータもあります。
それから、「免疫力を高める」という効果もあります。体内に侵入してきた細菌やウイルスをやっつけるという免疫に対して、 ビタミンDが関与しているということです。
ビタミンDを摂っていると、風邪をひきにくいという論文も発表されています。 ・それから、ビタミンDをちゃんと摂れている子供は、アレルギー性の喘息のリスクが低い。一方、ビタミンDをちゃんと摂れている成人男性は、アレルギー性鼻炎のリスクが低いという データも出ています。
★ビタミンDでがん予防?
なかでも1番の注目はがんのリスクを下げるということです。これについては、国立がん研究センターの山地太樹さんの研究が3月にイギリスの医学誌の電子版に掲載されたことで、注目されています。
研究では、国内の40歳~69歳の男女およそ3万4千人を対象に、およそ16年間、がんとビタミンDの関連について追跡調査したそうです。研究では、血液の中のビタミンDが量に従って4つのグループに分けました。
すると、4段階のうちビタミンDの量が一番多い人たちのグループについては、最も少ないグループに比べがんになるリスクが22%も低かった、という結果が出たんです。
さらに肝臓がんに関しては55%もリスクが低くかったのです。このデータからみれば、ビタミンDを摂ればがんの予防に繋がるということが言えます。
★なぜビタミンDが効のか?
実はまだはっきり分からないことが多いのですが、ビタミンDは肝臓と腎臓で少し構造が変えられ、最終的には活性型のビタミンDというものになります。この活性型ビタミンDが全身に運ばれて、さまざまなところで働くようです。
★日本人はビタミンD不足?
国民栄養調査をみてみると、一見足りているようにも見えるんです。国が定めているビタミンDの摂取の目安量は1日5・5㎍(マイクログラム)程度です。これに対して、実際に摂取している量は、2016年の調査では、1日7・5㎍程度。つまり基準を上回っています。
しかし、血液の中のビタミンDの量を測ってみると、女性、特に20代の女性は足りていないのです。20代の女性は十分とされるビタミンD量が半分以下。それ以外の世代も3分の2程度しかない。
なぜこんなことになっているのか。1つの原因には紫外線対策が指摘されています。ビタミンDというのは食べ物で摂る方法ともう1つは紫外線を浴びることで皮膚で合成されます。最近は紫外線対策が広がっているので、 自然と合成される部分が減っているのではないかということでした。
紫外線での合成が減っていると考えると、日本でももう少し食べ物で補った方がいいのでは、と 言われています。ちなみにアメリカやカナダの摂取基準は1日15㎍で、日本のおよそ3倍が基準です。
★ビタミンD補給のコツ
ビタミンDは、主に「紫外線」と「食事」から摂ることができますが、紫外線の場合は皮膚がんのリスクがあるので、ただ浴びればいいというものではありません。一般的には、手のひらを太陽に10分かざすことがいいということなんですが、ただ、10分手のひらを太陽にかざすのはあまり現実的とはいえません。そこで食事から摂るという方法になります。
何を食べたらいいのか、というと、魚とキノコです。1日に必要な摂取量は、日本では1日5・5㎍、アメリカでは、15㎍ですが・・・
- 例えば、サケは1切れ=80グラムでビタミンDがおよそ25㎍。
- サンマ1尾、いわしの丸干しやでもおよそ15㎍のビタミンDが摂れます。
また、女子栄養大学の上西教授が奨めているのがきのこ、特にマイタケです。生のマイタケ100グラムでビタミンDがおよそ5㎍摂れるということなんです。
マイタケはいろんな料理に混ぜることができるので、毎日摂る事もできます。きのこメーカーなどではインターネット上で様々なレシピを掲載しているので、参考にしてみてください。

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫