■好きなキャラクターの声を後輩が演じていると複雑な気持ちに……
ゲーム好きの声優さんは多いですが、ゲームは声優の仕事の領域でもあります。プライベートでプレイしているのに、自分や知人の声が突然出てくると、集中できなくなったりしないのでしょうか。「マイゲーム・マイライフ」のゲストにやってきた、声優の南條愛乃さんの声優あるある話が興味深かったです。
自身がヘビーユーザーでもあるFF14でもクルルというキャラクターを演じている南條さん。自分の声に対しては、不思議な感覚にはなるものの、気まずさよりも嬉しさのほうが上回るようです。
南條「FF14の中でもキャラクターを演じさせてもらっているのですが、のちに、自分がプレイしているキャラクターと掛け合うことになるじゃないですか」
宇多丸「そうですよね(笑)」
南條「私であって、こっちも私であって、この画面にいるの、両方私だ、みたいな」
宇多丸「あ、来た、って思うわけですよね。そろそろ来るぞ来るぞ、あ、私、来た、って」
南條「そうなんですよ。でも嬉しいです」
宇多丸「嬉しいんですか? それは。気まずいではなくて?」
南條「緊張はしますね。自分が好きなゲームだし、プレイヤーとしても参加しているので、ほかの14プレイヤーの皆さんにいいところ見せたい、というか。私が演じたキャラクターを好きになってほしい、っていうプレッシャーがあります」
一方で、同業者の声が画面から流れてくることには、複雑な思いが……。
宇多丸「(ゲームに)お知り合いの声優さんが出てくることも?」
南條「そう、だからなんか……気まずい……(笑)」
宇多丸「ですよね。ほかのユーザーには味わえない気まずさを」
南條「そうですね……。FF14をやっていてもあるんですけど、お気に入りのキャラクターがいて、ボイスがついていないキャラクターもいるんですけど、ボイスがついてるキャラクターいいなって思ったときに、その声をあててるのが先輩なのか後輩なのかはすごく気になりますね」
宇多丸「ほう」
南條「先輩がやっているキャラクターだったらまだ、好き好きー! って言えるけど、後輩だとなんか……」
宇多丸「ははははは。それどういう心理なんですか?」
南條「なんなんですかねえ……」
宇多丸「技術的な、プロの目になっちゃうとか?」
南條「いやー、なんでしょうね、先輩がやった仕事に対しては、ステキです、って言いやすいんですけど、後輩だと……照れくさいんですかね? どこかで“南條愛乃”が出てきてしまって」
歯切れが悪い感じでしたが、好きなゲームの好きなキャラクターを自分ではない同業の誰かが演じるというのは、どこかに「悔しさ」が少なからずあるのかもしれません。それが先輩ならば、「先輩」という立場のおかげでまだ素直に受け取れる、ということでしょうか。声優ならではの複雑な心境が垣間見えたトークでした。
■今回のピックアップ・フレーズ
宇多丸「ゲームをするときの椅子とかはこだわりありますか?」
南條「気になっているんですけど、椅子を買っちゃったら足の踏み場がなくなるくらい部屋が埋まっちゃうなって。でも、さっき(スタジオでVRの)テトリスをやっていて思ったのは、段ボールを積むのはうまいので、そういうところが(テトリスのプレイに)活かされたのかなと(笑)」
文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)
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