
アドベンチャー気分が楽しめる梓川のラフティング
北アルプスを源とする梓川が上高地を経て平野部に注ぐあたりに松本の町が広がっている。今週は梓川で楽しむラフティングと“湧水の城下町”とも呼ばれる松本の湧水群を紹介しよう。

北アルプスからの水を集めて流れる梓川は瀬となり淵を作って流れる
最近人気が高いラフティングが楽しめるのは梓川のほとりに立つ松本市の公共の宿、梓水苑(しすいえん)。宿のすぐ近くを梓川が流れ、川下りにはベストポジションにある。
ゴムボートで川を下るラフティングが日本で始まったのは平成の初期と言われるが、今では誰もが手軽に体験でき、急流を下るスリルと、ちょっとしたアドベンチャー気分が味わえると、若者からファミリーや熟年層まで幅広い層に人気がある。とりわけ初夏から秋まではラフティングのベストシーズン。
梓水苑では4月上旬から10月下旬まで宿の目の前を流れる梓川でこのラフティングを午前と午後の各1回ずつを日帰りまたは宿泊プランとして実施している。
スタート前に宿で用意したウエットスーツ、ライフジャケット、ヘルメットを身につけ、ガイドさんから諸注意を聞き、まずは陸上でパドルのさばきかたを教わり、全員で声を張り上げて川へ漕ぎ出す。北アルプスの雪解け水を集めて流れる梓川は早く、掛け声に合わせてパドルを動かさないと負けてしまいそう。
左岸に北アルプスの尾根を眺めながら下る。スタート地点から約4.5キロ、あっと言う間の1時間で、ゴールの氷室に上陸。帰路はマイクロバスで宿まで戻り、入浴してさっぱりした後に夕食を楽しんだ。

足裏のバランス状態に合わせて専属の指導士が正しい歩き方をレクチャー。肩の凝りや腰の痛みの抑制に役立つ
この宿では健康をテーマの一つにしており、こうしたリバースポーツのほか、希望に応じて健康状態をチェックする宿泊プランも企画している。
毎週水曜日に行われている足裏バランス測定のコースでは体のバランスを足裏から器械で測定し、体全体を支える力が偏りなくバランスがとれているかどうかかをチェックし、これを基にして専属の健康運動指導士が効果的なウオーキングの実践指導を行う。
例えば外側に偏っていれば測定結果に小指からかかとにかけての外側が赤い色で示され、これを基に正しい歩き方の指導、実践を受けて肩こりや腰痛などを軽減させるといった健康な体づくりがこの宿で体験できる。「歩き方によって知らぬ間に体のどこかを痛めていることがこの測定で知らされることがありますね」と指導士は言う。この足裏バランス測定のコースは測定と実践指導にランチと入浴が付いて2160円。 このほか、松本市立病院の人間ドックと連携し、医師及び指導士の指示及びレッスンで宿に宿泊しながら健康づくりを行うプラン(1泊2食つきで6万6960円)などもある。

松本は名水の湧く城下町。その一つ源智の井戸は江戸時代から知られる“第一の名水”
梓水苑から梓川沿いに下って東に行き、長野自動車道を抜けると松本の市街地に入る。
松本市の中心部には松本城が立ち、かつては3つのお堀があり、さらにその外側に防衛のために流れを変えた女鳥羽川、その先には薄川も流れている。人工と天然の障害を巧みに組み合わせた城と言えるが、周辺はこれらの河川の扇状地でもある。このため中心部は湧水が豊かで、いたるところに井戸があり、その水が流れる水路が細かく走り、“湧水の城下町”とも呼ばれるほど。平成20年には環境省より「まつもと城下町湧水群」として平成の名水百選に選定されている。
市内には主だった井戸だけでも30近くあり、これらを記した名水巡りの地図も市の観光案内所から出ている。これを片手に名水巡りをするといい。
そのいくつかを紹介すると―、松本城の近くにはお堀から湧き出ていると言われる北門大手井戸、そこから女鳥羽川方向に南へ向かうと飲食店の集まる露地に鯛萬の井戸。ここは酔い覚ましにいいかも知れない。そのまま下って次は造り酒屋の善哉(よきかな)酒造へ。店の前には醸造の仕込み水に使う女鳥羽の泉が気持ち良く湧き出ており、通りを行く人がコップで飲んだり、持参したペットボトルに汲んで持ち帰っている。「どなたでも、好きなだけお飲みください」と酒蔵の女将は豊富な湧水のようにおおらか。
女鳥羽川を渡れば住宅地の道端に伊織の霊水が湧き、こちらも気軽に水を汲んでいく。こんな具合に市内を歩けば棒ならぬ名水に出合う。江戸時代の案内記『善光寺道名所図会』に“当国第一の名水”と記されている源智の井戸は中でも人気ナンバー1で、湧出量は毎分約200リットルと豊富。いつも市民や観光客でにぎわっている。ここは土蔵などが続く中町通りから曲がりくねって流れる水路のような蛇川を越えてあたりにある。
名城松本城を訪ねた後は名水を巡るのも初夏の松本の旅の楽しみ方と言える。

山辺ワイナリーのレストラン、マリアージュの信州牛のほほ肉のワイン煮。赤ワインとよく合う
松本市の郊外、美ヶ原の麓に広がる入山辺に足を延せば明治時代から生食用にブドウ作りを始め、現在はワイン醸造に力を入れている山辺ワイナリーがある。
実を食べるブドウ栽培からスタートしただけに現在もワインの主力はデラウエア、マスカット、巨峰などで、最近はこれに加えてシャルドネ、メルローなどワイン用のブドウからも作っている。ワイナリー周辺には南西の斜面いっぱいにブドウが栽培されており、標高は約700m前後。昼夜の寒暖の差が甘みと酸味のバランスをよくし、おいいしいワインを生むという。年間6~7万本を生産している。
隣接するレストラン、マリアージュは窓越しに常念岳、蝶ヶ岳などの北アルプスの山々が眺められ、お店ご自慢の信州牛の頬肉を赤ワインと共に半日間じっくり煮込んだ料理など味わえ、仕上げに木で熟したブドウの実をさらに天日で1週間干し、干しブドウ状のものをワインに醸したヴァン・ド・ソレイユをデザートワインで楽しめば目と口で松本の魅力が堪能できる。
問い合わせ:梓水苑℡0263-78-5550
松本市観光情報センター℡0263-39-7176
交通:中央本線及び篠ノ井線松本駅下車。
車は長野自動車道松本IC利用