宮沢賢治は、37年という短い生涯で、実は2冊しか、本を出していません。
数々の雑誌に小説や童話を発表していましたが、
詩集『春と修羅』と、童話短編集『注文の多い料理店』だけが、やっと本になったのです。
『カイロ団長』では、強欲なトノサマガエルと、30匹のアマガエルの攻防を描いています。
作家としてやっていける自信をなくし、農業に生きようとしたこともある賢治ですが、
そのときの理想の姿が、30匹のあまがえるに投影されているのかもしれません。
『オツベルと象』は、宮沢賢治が生前発表した数少ない童話のひとつです。
宮沢賢治は童話を通して、働く側と雇う側の契約のありかたというテーマを投げかけています。
この作品の最後の一文は、「おや、川へはいっちゃいけないったら」ですが、
この解釈には諸説あります。
羊飼いが語り部、という設定なので、話が終わったからといってすぐに川へはいっちゃいけないよ、
と言っているという説や、
ふらりと迷いこんだ象を現実的な戒めとしてとらえ直している。
という説などが、あります。
「カイロ団長」
一緒に楽しく仕事をしていた30匹のあまがえるたちは、
たまたま通りかかったとのさまがえるの店で、
舶来ウェスキイなるものを飲みすぎ、お金を払えず、家来にされてしまう。
無理難題を課せられたあまがえるたちの運命は?
「オツベルと像」
地主のオツベルのもとに、ふらりとやってきた大きな白い象。
オツベルは、象をだまし、自分のいいようにこき使います。
そうとは知らぬ象は、一生懸命に労働を楽しむのですが……
やがて食事も満足に与えられず、弱っていく象。彼がとった行動は……