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Channel: 放送後記 – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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痛くて歩けない!変形性股関節症。進歩する治療方法

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今年の3月、リスナーの方からの質問を受けて「変形性ひざ関節症」を取り上げました。するとその後「変形性股関節症についても取り上げて欲しい」という依頼が数件ありました。実際、この変形性股関節症に悩む方も多く、一方で、その治療はどんどん進化しています。

そこで、11月12日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、変形性股関節症とその最新医療について、取り上げました。

★変形性股関節症とは

「変形性股関節症」とは、関節のつなぎ目の軟骨が、すり減ってしまう状態です。

普通の股関節は、この軟骨によって滑らかに動き、広い可動域を保っています。しかし軟骨がすり減ることで、骨と骨が直接こすれ、骨の形が変形してしまいます。こうなると、股関節の動きが狭まってしまい、また、股関節に強い痛みが出ます。

具体的な症状としては、「座っていて立ち上がる時に痛い」「歩き始めに痛みがある」「脚が開きにくい」そして、階段や車・バスの乗り降りも手すりが必要になります。さらに進行すると、「足の爪が切れない」「靴下がはけない」となります。また痛みが出た方の脚が少しずつ短くなり、左右の脚の長さの違いから、「跛行(はこう)」になるなど、どんどん容体が悪化してきますので注意が必要です。

★原因は?

軟骨がすり減ってしまう主な原因は、加齢です。そのため多くの人が悩んでいます。日本整形外科学会の資料によれば、日本人の1〜4・3%、およそ120〜510万人が、変形性股関節症で悩んでいるのではと推計されています。そして男性は2%程度ですが、女性は2~7・5%で、女性の方がかかりやすい病気です。女性の場合は、生まれつき骨盤の被りが浅い方もいて、その影響で発症する方も多いです。

★治療は?

まずは骨の状況を見極めるよう、レントゲンや、CT、MRIで詳しく調べます。その結果、症状が浅ければ、まず手術ではなく薬や運動などの「保存療法」が行われます。

薬物療法では、痛み止めのほか、筋肉の張りを抑えて関節をゆるめる筋弛緩薬もあります。

運動療法は、股関節回りの筋肉をリラックスさせ、同時に筋肉を強化します。

このほか、患部を温める温熱療法なども保存療法として用いられます。

ただし、こうした療法は対処療法で、軟骨が再生されるものではありません。根本的に治す場合は、「手術療法」となります。

★どのような手術をするのは?

主な手術には3つあります。「関節鏡手術」「骨切り術」「人工関節手術」です。

まず、関節鏡手術は、簡単に言うと、腹腔鏡手術の関節版です。切り開かず、1センチ程の穴を2、3ヶ所開け、そこから内視鏡などを入れて手術します。これで、痛みの原因となっている箇所を削り取り、関節のぶつかりの原因をとりはぶきます。

続いて「骨切り術」で、これは骨盤の一部、または大腿骨の一部を切り取る手術です。骨が組み合うところを広くすることで、可動域を広げる仕組みです。

どちらの手術も、痛みが軽減されますが、ただ、軟骨が十分に保たれていることが前提です。そのため、症状が比較的軽く、概ね40歳くらいまでの方に向いている手術です。

また、これらの手術も軟骨を再生させるものではないので、完全に治るわけではないです。変形性股関節症は少しずつ進行していきますので、手術後も定期検診で進行を調べる必要。

★完全に治す方法はないのか?

変形性股関節症を完全に治すのは、近年進歩が著しい「人工関節置換手術」になります。文字通り人工股関節に置換=交換する手術で、軟骨がすり減ってしまった方はこれになります。

具体的には、変形して傷んでいる股関節を切り取って、人工関節をはめ込みます。股関節は、グーの形をした大腿骨の先端を、パーの形をした骨盤側が受け止めています。このグーとパーの部分を、両方とも、人工の滑らかに動く器具に交換、はめ込みます。これによって、軟骨が十分にあった時のような動きを完全に取り戻す、という仕組みです。

こう聞くと、非常に大掛かりな手術をイメージしますが、最近はどんどん進化しています。昔は、手術には15センチほどの切開が必要でしたが、今は7、8センチですみます。

★時間はどれくらいかかるのか?

手術にはいろいろな手法がありますが、太ももの前方から切開する方法では、手術時間は片脚で1時間弱で済みます。この方法だと、筋肉を切ることもないので、体の負担が少なく、回復のスピードも速いです。

一般的には、術後2〜3日程度で車椅子移動を始め、4〜5日程度で歩行練習を始めます。そして、術後、3週間程度で退院でき、事務的な仕事でしたら間もなく、社会復帰可能です。ちなみに退院後は、1か月くらいは補助的に杖を使う方もいますが、やがて運動も可能です。

あとは、定期的に通院して、関節の様子をチェックするだけです。ちなみに、退院のスピードは個人差があって、早い人は術後4日で出た人もいるそうです。逆に相当悪化し、車椅子で入院した方は、2〜3か月かかるケースもあるようです。また、高齢になればなるほど、手術の体への負担は重くなるので、早い方がいいでしょう。

★注意点は?

昔は耐久性が問題とも言われましたが、最近は品質も上がって、耐久性も伸びています。最新の人工股関節では、酸化して劣化するのを防ぐようビタミンEが添加されたりしています。これらによって、使い方によって個人差はありますが、20〜30年は持ちます。60歳以上で、人工股関節を入れた方は、ほぼ再手術は必要ないでしょう。

★費用は?

人工股関節の手術は、保険適用ですので「高額療養費制度」を使えば自己負担は少ないです。年収によって変わりますが、一般的には10万円前後。高収入の方でも30万円程度と考えていいでしょう。

最後に、人工股関節の手術の特徴は、受けた人の満足度が高いということがあります。手術を受けた人の98%が順調な経過をたどり、痛みのない生活を実現されています。

術後は、長い間悩んでいた痛みが劇的に取れるため、買い物や旅行はもちろん、スポーツも、ゴルフなど、楽しんでいる方もたくさんいます。抵抗感のある方も多いのですが、術後「もっと早く受ければよかった」という人もいます。頭から否定するのではなく、まずは担当の医師に詳しく聞いていただきたいと思っています。

一例として東京近郊で有名な病院は、玉川病院、JR東京総合病院、湘南鎌倉人工関節センター、順天堂大学練馬病院など。

東京以外の病院としては、JCHO大阪病院、関西労災病院(兵庫県尼崎市)などが有名です。

最近は、手術はコンピュータで三次元シミュレーションで正確に計画されます。こうしたことも、安心材料になっています。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20181112080130

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)


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