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Channel: 放送後記 – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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腎臓がんの治療法が進化

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腎臓がんは、50代から増え始めます。患者さんの数は、がんの種類の中で必ずしも多いがんではありませんが、この10年くらいは右肩上がりで増えています。そんな腎臓がんですが、最近、手術や治療の方法がどんどん進化しています。

そこで、1月14日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、腎臓がんについて順天堂大学で泌尿器外科の堀江重郎教授に取材しましたので、お伝えします。

★腎臓とは

腎臓は、腰より少し上の背中側に、左右対称に1つずつある臓器で、大きさは、にぎりこぶし程度、形は、ソラマメのような形をしています。この腎臓には、心臓が送り出す体内の血液の5分の1が集められます。そして、腎臓は、さまざまな働きをします。血液をろ過して尿を作り、老廃物を排出します。そして体内の水分量を一定に保ち、ナトリウム、カルシウムなどをコントロールします。そのことで、体を弱アルカリ性に保ち、浸透圧を調整するのです。さらに、血圧、貧血、および、骨の代謝をコントロールするホルモンも作ります。腎臓は、血液を通すだけで、これだけの重要な働きをしている、というわけです。

★腎臓がんとは

そんな腎臓にできるがんが「腎臓がん」ですが、患者さんは、年間でおよそ2万3000人、そのうち亡くなる方は、およそ7000人で、どちらも年々増加しています。腎細胞がんは50歳ごろから増加し、70歳代まで高齢になるほど高くなります。男女比ですが、2対1、もしくは3対1で男性の方が多くなっています。

★自覚症状はあるのか?

気になる自覚症状ですが、腎臓がんには特徴的な症状が3つあります。『肉眼でも分かる血尿』『脇腹を触るとシコリに触れる』『脇腹に痛みを感じる』の3つです。このような症状が出てくると腎臓がんは進行した状態で、早期には自覚症状はありません。

ただ、腎臓がんは、早期で発見されることが多いです。ほとんどの人が健康診断や人間ドックの超音波検査などで発見されています。こうして見つかった後は、精密検査に進みます。超音波検査の後に、CT検査を行い、リンパ節や他の臓器への広がりを調べます。これでがんかどうかが、ほとんどわかります。

さらに、血管内への広がりを診るために、MRI検査が追加されることもあります。こうした検査が行われ、腎臓がんの状態や進行状況がわかると、治療に進みます。

★腎臓がんの治療とは

がんは、大きいと手術できないということもありますが、腎臓がんの場合は転移していなければ、がんが少し大きくても手術が第1選択になります。まず、小さなものに関しては部分的に切除をします。一般的には、4センチ以下が部分切除ですが、最近は4センチを超えても、周囲の部位との条件次第で、可能であれば、ロボット手術で行うように進化しています。

そして部分切除のロボット手術は、腎臓がんでは保険適用に進化しています。実は、腎臓がんは、前立腺がんの手術に次いで、2番目に許可されたロボット手術です。2016年4月に保険適応になっています。ロボット手術では、患者さんの負担が少ないですが、ただ、問題もあります。腹腔鏡手術もロボット手術もそうなのですが、身体の中に内視鏡を入れて手術をします。そのため、見える方向は基本的に一方向です。

★3D時代で安全性が向上

ただ、その悩みも、昔のものです。今の技術は3D時代に進化しています。CTによって、0・1ミリ間隔で身体をスライスして映像化できるので、その情報から患者さんの体とそっくりな腎臓の模型が、3Dプリンタで、できるんです。

腎臓の形、腫瘍の位置、血管の場所がすべてわかります。その模型をいろいろな角度から見ると、腫瘍の位置が頭にインプットされます。また、そのもととなる設計図のような物をロボットの手術画面の横に置いてあります。すると、何処に血管があるとか、すべてわかり、患者さんの手術の安全性を高めると共に、外科医が早く技術を習得し、手術の腕が上がるということです。腎臓がんの部分切除はこれによって安全にできるのです。

★がんが大きい場合は全摘

一方、大きくなりすぎてしまうと、やはり、部分摘出ではなく、全摘となります。ただ、腎臓を全摘するとしても、今は開腹手術よりも腹腔鏡手術が多いです。開腹手術は、取材した順天堂の場合は、開腹手術は年間数例しかないそうです。年間150例のうち数例というくらいで、腎臓がんでは、今は、お腹を切り開かなくてもいい時代になっているということです。要するに、体への負担が小さい手術が主流になってきている、というわけです。

★手術以外の治療は?

腎臓がんが転移している場合、手術ではなく薬物療法になりますが、これも進化しました。腫瘍は新しい血管を引き寄せて大きくなっていきますが、その新しい血管を抑えて、腫瘍が大きくならないようにする薬が開発されました。それが「分子標的薬」です。分子標的薬は2008年から使用が可能となりました。分子標的薬は6種類出ています。

  • 「ネクサバール」
  • 「スーテント」
  • 「インライタ」
  • 「ヴォトリエント」
  • 「アフィニトール」
  • 「トーリセル」です。

これを使っていくことで、1つの薬が効かなくなっても、次の薬でトライして行くのです。

★近年、注目されている薬

また、最近すごく注目されているのが「免疫チェックポイント阻害薬」です。腎臓がんでは「オプジーボ」と「ヤーボイ」が使われています。この2つの薬を組み合わせて使う方法も去年の8月から保険適用になりました。オプジーボとヤーボイの併用は3週間ごとに4回点滴投与して治療を行います。2つを組み合わせて治療すると、だいたい10%の人が腎臓がんが治ってしまいます。

少ないと思うかもしれませんが、現代の医療では、これは最大のポイントです。これまでは腎臓がんが転移したらあきらめる状況でしたが、あきらめる必要はありません。まだまだ治療はあるのです。それがオプジーボとヤーボイの併用なのです。

腎臓がんや皮膚がんでは「免疫チェックポイント阻害薬」で「効果があった」にとどまらず、「治った人」がかなり出ているのです。「手の施しようがない」と言われていた患者さんが治っているのです。でも、やはり早期に発見できるのが一番です。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190114080130

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)


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