花粉や鼻かぜの症状と似ているのが「副鼻腔炎」です。副鼻腔炎はたいていの場合、数週間で自然に治りますが、重症化すると、合併症などを起こしたり、手術になったりするので注意が必要です。
そこで、4月29日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、鼻の病気、副鼻腔炎についてお伝えします。
★副鼻腔炎=ちくのう症
副鼻腔炎はちくのう症とも呼ばれ、副鼻腔というところに細菌性の膿がたまる病気です。
鼻腔というのは鼻の穴の事ですが、副鼻腔というのはその鼻の穴につながる空洞のことです。どこにあるかというと、頬骨からおでこの奥に、左右4つずつの空洞が開いているんです。小さな穴で鼻の穴とつながっていて、副鼻腔の粘膜が鼻水を作るほか、この空洞が顔面への衝撃を吸収したり、声を響かせる働きをしていると言われています。
副鼻腔炎は、風邪などをきっかけに、副鼻腔の粘膜が炎症を起こして腫れてしまい、鼻の穴と副鼻腔の出入り口をふさいでしまいます。すると、空気の流れが悪くなり、副鼻腔内に鼻汁がたまり、そこに細菌やウイルスが繁殖し、膿ができてたまりまってしまう、というわけです。
これが副鼻腔炎で、毎年、100万人から150万人がかかっています。
★副鼻腔炎の症状
症状は、鼻詰まり、緑や黄色の鼻が出る、副鼻腔のあたりのほっぺやおでこに痛み・・。急激に進行して、熱が出る事もあり、こうした急性の段階を「急性副鼻腔炎」といいます。さらに、副鼻腔炎の症状が長引き、3カ月以上続く場合は、「慢性副鼻腔炎」と呼ばれます。
★慢性副鼻腔炎とは
慢性副鼻腔炎では痛みはほとんどなく、鼻汁が出る、鼻がつまる、においがわかりにくい、からだがだるいといった症状が続きます。
ここで気をつけなければいけないのは、アレルギー性鼻炎などと間違えやすい事です。少しでも症状に気付いた時はときは、放っておかずに耳鼻咽喉科を受診して検査を受けて、アレルギー性の鼻炎なのか、それとも細菌感染による副鼻腔炎なのか、このどちらなのかを正確に診断して、適切な治療を受ける必要があります。
★症状が悪化すると?
治療が遅れ、慢性副鼻腔炎が悪化していくと、さらに鼻の粘膜に鼻ポリープや鼻たけと呼ばれるキノコのような突起物ができてしまいます。また、外からきれいな空気を身体に送り込む鼻の働きが低下し、慢性気管支炎や喘息などを引き起こす事もあります。
特に中高齢者は年齢とともに肺機能が低下し、慢性副鼻腔炎の合併によって日常生活にも支障が生じる可能性もあり、早めに治療を受けるべきです。副鼻腔炎は悪化してからでは、治療の効果も下がるので、早めの治療が必要です。
★副鼻腔炎の治療
治療は大きく3つあります。「薬物療法」「鼻洗浄」「手術療法」です。
まず薬物療法ですが、過去に適切な治療経験のない方は、まずマクロライド系抗生物質と呼ばれる薬を少量で2、3ヶ月間内服します。このマクロライド系抗生物質には、炎症を抑える効果があり、鼻汁の分泌を抑制します。重症例でなければおよそ7割の症例で治癒が期待できます。
一方で、2、3ヶ月服用することにより、肝機能異常などの副作用の出ることもありますが、その場合は服用を中止すれば問題はないので、血液検査をしながら様子をみて治療をします。
また、最近では副鼻腔炎に成人発症型ぜんそくやアスピリン喘息、アレルギー性鼻炎などを合併するケースが多くなっています。この場合は、抗アレルギー薬とステロイド薬も併用していく事になります。
続いて鼻洗浄です。鼻洗浄は、温かい生理的食塩水を使って洗浄したり、文字どおり鼻を洗います。体の浸透圧と同じ、0・9%の食塩水を、手動のポンプなどで鼻から入れて、鼻や口から出す、という作業になります。
また、「ネブライザー」という吸入器で鼻やのどの炎症を抑える薬を使用することもあります。「ネブライザー」は、直接鼻の中のバイ菌を攻撃できる有効な治療法の1つです。「ネブライザー」は、病院でも受けられるほか、携帯型のものが処方されます。副作用の少ない治療でもあるので、朝晩など頻繁に使うと症状も軽くなり早く治りやすいです。症状が中等度以上の場合、7日間から10日間、投与します。
こうした、鼻洗浄や薬物療法でも症状が改善しない場合は、手術ということになります。
★副鼻腔炎の手術は痛くない?
その昔、副鼻腔炎の手術は「怖くて痛い」と有名でした。昔の慢性副鼻腔炎の手術は、前歯と上唇の間を切り開いて、めくり上げ、そして頬骨などを削って、副鼻腔の粘膜を全て取ってしまう手術でした。この方法では、手術中の出血や術後の顔面の腫れ、しびれが生じやすいなど、体への負担も大きく、問題が多いものでした。
しかし、最近の新しい手術法は、局部麻酔で、内視鏡を使っての手術となっています。内視鏡を鼻の穴から入れて、副鼻腔まで通し、その内部の様子をテレビモニターに映します。そして、病気の部分を1つ1つ確認しながら、粘膜全体ではなく、悪い部分だけ切ります。
この方法では、体への負担が少なく、出血も少量ですみ、腫れやしびれも抑えられます。また、病気が軽症の場合は入院しないで、外来での日帰り手術も可能になっています。
★新しいタイプの副鼻腔炎とは
なお、副鼻腔炎については、2000年に入ってから、新しいタイプのものも出てきました。白血球の一種が増えてしまうタイプのもので、ある病院の調査では、今では、従来の慢性副鼻腔炎の患者さんを上回っているとされています。原因は不明ですが、ただし、こちらの治療も、薬、鼻洗浄、手術が基本です。
こちらの場合は、ステロイドが中心で、また一度治ったと思っても、その後に再発しやすいため、長期間、薬を飲んで、根気強く、治療するということです。
副鼻腔炎は悪化してからでは、治療の効果も下がるので、早めの治療が必要です。鼻詰まり、緑や黄色の鼻が出る、副鼻腔のあたりのほっぺやおでこに痛み・・気になる症状があれば、早めに耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫