ホクロかな、と放置していたら、皮膚がん。それも進行してしまった・・・そういう怖い皮膚がんがあります。6月24日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、この「ホクロと間違えやすい皮膚がん」について取り上げました。
★ホクロと間違えやすい皮膚がん2つ
まず、ホクロと間違えやすい皮膚がんとは何か。それは主に2つあります。
- 「メラノーマ」。日本名では悪性黒色腫=悪性の黒い色の腫瘍と書きます。
- 「基底細胞がん」。基礎の底辺の細胞がんと書きます。
今回は、この「メラノーマ」と「基底細胞がん」それぞれを見ていきます。
★メラノーマとホクロは似ている?
まずメラノーマですが、こちらは、別名「ホクロのがん」と呼ばれるほど、ホクロと紛らわしいものとして有名ながんです。
では、なぜホクロと間違えてしまうのか。
メラノーマは、紫外線から体を守るメラニンという黒い色素を作り出す細胞ががん化した物。そしてホクロも、このメラニンが集まった黒い部分ですので、見た目はかなり似ています。
加えてメラノーマは、痛いなどの自覚症状がありません。そのため、皮膚に黒い点があって、少し大きくなってきても、「ホクロが年とともに少し大きくなってきたな」というくらいに思って、放って置かれる方が多いようです。まさか病気、それもがんとは思わないわけです。
★メラノーマは転移しやすい
ただ、このメラノーマは、非常に転移しやすいがんで、ホクロと間違えて発見が遅れるのは文字通り致命的となります。メラノーマは日本では年間4千人程度が罹りますが、死亡者は7百人で、割合は大きいです。
★メラノーマとホクロの見分け方
メラノーマとホクロの見分け方ですが、メラノーマには、ホクロにない特徴があります。
- 形が左右対称ではない
- 色に濃淡があり均一ではない
- 縁がギザギザですっきりしていない
- 直径が6ミリ以上になっている
左右対称ではない、色にムラがある、縁がギザギザ、直径が6ミリ以上・・・
こうした特徴があった場合には、メラノーマを疑ってみる必要があります。年齢的には、10代以降、特に30代を超えると多くなると言われています。
★メラノーマは足の裏と爪に注意
なお、メラノーマは体のどこにでもできますが、日本人の場合、足の裏にできるケースが3割あるとされています。顔や腕などと違い、足の裏は中々、目が届きませんが、足の裏のホクロには注意が必要です。
メラノーマは、もう1箇所、爪にもできるケースも少なくありません。
この爪にできるメラノーマは、薄黒いスジのような形ででき始めます。そのため「血豆」と間違えて、放置しているうちに、どんどん大きくなることがあります。爪の根元からまっすぐに黒い線ができて、それが広がっていくようなら、がんを疑って下さい。
★皮膚科でダーモスコピーを
怪しいと思ったら、まず皮膚科の専門医に行ってください。
皮膚科では、まず「ダーモスコピー」という機械を使って検査を行います。皮膚を10〜30倍に拡大するカメラで、これでホクロなのか、がんなのか、わかります。
そしてメラノーマだと診断されたら、CT、MRI、PET検査を行います。これによって、メラノーマがどこかに転移していないか、チェックすることができます。
★メラノーマの治療
検査の次は治療ですが、状態によって対応が変わります。
メラノーマが小さく、深さ0・75ミリ未満で、転移がない場合、がんの切除だけで済みます。がんを徹底的に取り除くため、患部の周辺1〜2センチの大きさで切る必要はありますが、見た目を整えるために、自分の別の部分の皮膚を移植することもできます。
一方、深さが0・75ミリ以上の場合は、転移の恐れがあるため、リンパ節の検査を行います。そして、リンパに転移があった場合は、その部位のリンパ節を全て切除します。
さらに、他の臓器に転移があった場合には、手術は困難となるため、薬物療法となります。薬物療法は、患者さんの遺伝子の状況に合わせて、がんが増える原因を作る物質を狙い撃つ「分子標的治療薬」または、免疫力をフルに発揮してがんを叩く「オプジーボ」などの点滴薬で治療していきます。
分子標的薬はスピード感があり、使用後1週間で体調が改善されたケースもあります。
一方、オプジーボなど免疫を活かす薬は、効果が出る人は3割と限られますが、逆にハマると、がんが消えた、という報告もあり、一定の期待はできます。免疫を活かす点滴薬は、今はオプジーボ以外にも広がっているので、患者さんの状態に合わせて、選択肢が広がっています。
★基底細胞がんもホクロと似ている
ホクロと間違えやすい皮膚がんは、メラノーマのほかにも「基底細胞がん」があります。こちらは皮膚がんの25%を占める、最も多い皮膚がんとされています。
メラノーマは、30代くらいから増え、体のどこにでもできますが、こちらの「基底細胞がん」は、50代から増え始め、80〜85%は顔にできます。顔の中でも、額や、目の周り、鼻の周りにできることが多く、ホクロに似ています。
基底細胞がんは、転移はほとんどしませんが、放置すると周囲の組織を壊しながら進行します。そのため、がんが筋肉へ、そして骨へと到達していき、こうなると手術は厳しいものになります。そのため、早期発見が大切です。
★基底細胞がんとホクロの見分け方
では、どうやってホクロと見分ければいいのか?
基底細胞がんは、
- 最初は、小さな黒い点から始まって
- だんだん大きく成長して
- やがて立体的に盛り上がっていき
- その後、中央部に傷のようのものができます
- すると、タオルで顔を拭くと、血が滲んだりします
このように、拡大、膨らみ、傷、血が滲む、という過程をたどるようなら、ホクロではなく、皮膚がんの可能性を疑ってみてください。
★基底細胞がんの検査と治療
検査、治療は、メラノーマと同じで、皮膚科でダーモスコピーという拡大鏡により検査、転移の状況に合わせて、切除していきます。
発見が遅れ、がんが筋肉まで侵食していると、切除する面積、深さも大きくなり大変です。やはり、ホクロではないかもしれない、と早期に気づくことが、重要です。
★とにかく疑ってみる
メラノーマも、基底細胞がんも、ホクロのようなところから始まります。顔にできた場合、毎日鏡で見ていると、見慣れてしまい、最近できたものでも、ずっと前からあるように感じて、見逃しがちです。大きくなるなど、変化があったら、すぐに皮膚科の専門医に診てもらいましょう。

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫