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Channel: 放送後記 – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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誰にでも起こる心房細動。その最新の治療「ウォッチマン」

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きょうは「脳梗塞を防ぐ心房細動の新治療」。心房細動は、心臓にある心房という部分が小刻みで不規則な動きをする不整脈です。心房細動になると脳梗塞のリスクが高くなり、その他の脳梗塞に比べて重症化しやすく、命に関わるだけでなく、仮に一命を取りとめても重篤な後遺症を残すことがあります。こうした中で、あらたなカテーテル治療が登場し、治療が始められました。

そこで、10月21日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)では、心房細動と、それによる脳梗塞の新たな治療法を中心にお伝えしました。

★心房細動と脳梗塞の関係

心臓は上下左右に大きく4つに分かれていて、左右それぞれに心房と心室という部屋があります。心房は血液を一時ためるところ、そして心室は心房に溜まった血液を吸い込み、心臓の外へ送り出すポンプの働きをしています。全身を巡って酸素が少なくなった血液は右の心房に入り、右の心室から肺へ送り出されます。肺で酸素をいっぱい吸った血液は、左の心房に入り、左の心室から全身へ送り出される仕組み。

この動きをコントロールしているのは、心臓の中で発生する電気信号です。これによって、1分間に60〜80回、規則正しくポンプのように動いて血液を流しますが、心房細動があると、電気信号が乱れ、その結果、1分間の心拍数が400にもなります。心房が小刻みに震える動きとなり、心房内で血液がよどんで、固まりやすくなってしまいます。

この心房細動は珍しい病気ではありません。加齢、高血圧、糖尿病、アルコールやカフェインの取りすぎ、睡眠不足やストレス、そして喫煙などが主な原因とされていて、高齢化の中で日本でも増えています。

日本では、2010年度の患者数はおよそ80万人以上と推定されます。特に60歳を境に増えていき、80歳以上ではおよそ10人に1人は心房細動があるとされ、男性が女性に比べおよそ1・5倍発症しやすいと言われています。

★心房細動は脳梗塞のリスクになる

問題は、この心房細動が、重篤な脳梗塞のリスクになることです。心房細胞になると、効果的に血液を送り出すことができなくなるので、心臓の中での血液の流れが滞り、血液がよどんで、血の塊=血栓ができます。その血栓は大きいものでは直径数センチのものもあり、それが脳の血管に運ばれて詰まると、重篤な脳梗塞が起きてしまうのです。心房細動がある人は無い人と比べると、脳梗塞を発症する確率はおよそ5倍高いそうです。

また、心房細動を原因とする脳梗塞は、ノックアウト型脳梗塞とも呼ばれています。ボクシングの、あのノックアウトです。と言うのも、ほかの脳梗塞に比べて、重篤な麻痺などの機能障害を引き起こしたりして、死に結びつく可能性が高いことから、こう呼ばれているんです。

心房細動による脳梗塞を防ぐために、これまでいろんな治療法が確立されてきました。まずは、血液の塊ができないようにしようということで、血液をサラサラにする薬が出ました。有名なのはワルファリンという薬ですが、最近では、DOACという新しい薬が登場し、これまでより脳出血のリスクが少なく、食べ物の影響が少なく使いやすいと評判です。

ただ、血液をサラサラにする薬は、生涯ずっと飲み続けなければなりません。血液をサラサラにする分、出血のリスクもあります。高齢になると転倒するリスクが大きくなるので、転んだりしてケガによる出血も生じやすい。

一方、心房細動そのものを抑えようという薬もあります。不整脈を抑える抗不整脈薬です。ただ、抗不整脈薬だけでは不整脈は完全に抑えられませんし、心不全のリスクもあります。

★注目されるカテーテル治療

そこで、薬の治療が困難な方に向けて、最近では、カテーテルでの治療が注目されます。カテーテルを使った治療はいくつかありますが。中でも最新で注目されているのは「ウォッチマン」という医療機器を使うカテーテル治療です。これは心房細動そのものではなく、それによる脳梗塞のリスクを取り除く予防的な治療です。

心房細動が起こると、血液がうまく送り出されず、よどんで、血栓ができやすくなりますが、実は、血栓ができやすい部分が左の心房にあります。それは「左心耳(さしんじ)」です。外から見ると、左の心房から耳のように飛び出た部分なんですが、内側では、左の心房の壁に穴が開いて、隣に袋状の小部屋がある形になっています。

大きさは親指程度なのですが、血流が乱れると、ここに血栓ができやすいのです。海外の研究によると、心房細動による血栓の90%は、左心耳に認められた、とされているほか、左心耳でできた血栓は大きく、重篤になりやすいという問題があります。

このため、近年、左心耳を切ったり塞いだりする治療法が取り入れられるようになりました。左心耳は、盲腸のように、なくても大きな問題がないからです。ただ、予防だけのために、胸を切り開いて左心耳を手術するのは体への負担が大き過ぎます。

★カテーテル治療「ウォッチマン」

そこで開発されたのが、「ウォッチマン」という医療機器を使ったカテーテル治療です。ウォッチマンは円形のパラシュートのように開く医療機器で、これを足の付け根の静脈から、カテーテルで左心耳まで送り込んで、左心耳の中で、パッと開いて固定させます。すると、パラシュートの天井が左の心房にあった左心耳への入り口を塞いでくれます。これは1か月もすると完全に心臓と一体化され、入り口はきれいにふさがれます。これによって、左心耳で血栓ができることはなくなり、心原性脳梗塞のリスクが90%以上減る という仕組みです。

カテーテルでの治療ですので、時間は1時間ほど、しかも翌日から普通に歩くことができます。もう1つメリットとしては、血液をサラサラにする薬を飲まなくてよくなるのも重要です。

★治療は保険適用

日本ではまだ導入され始めたばかりの治療法ですが、ことし9月から保険適応になりました。このウォッチマンは、関東近郊では「慶應義塾大学病院」「東京医科歯科大附属病院」「東邦大学医療センター大橋病院」「三井記念病院」「横須賀共済病院」「筑波大病院」等です。今後、治療を受けられる病院がさらに増えていくと思われます。内科的治療なので、診療科は循環器内科になります。

心房細動で薬を飲まなければいけない状態なのに、出血のリスクなどが高く、薬での治療が困難な方に行われています。

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191021080130

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)


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