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Channel: 放送後記 – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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200万人に朗報。原因不明のふるえの最新治療

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「ふるえの病気」と言ってもピントこないかもしれませんが、原因不明で手などが強く震えて、日常生活に支障がある方がたくさんいます。この病気については以前も少し触れましたが、最新医療が広がり、そういう患者さんの200万人が救われる可能性が出てきました。

12月23日(月)松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、この「ふるえ」の治療の最新情報について取り上げました。

★原因不明の「ふるえ」とは?

病名として、正式には「本態性振戦」といいます。「本態性」は、「原因がわからない」という意味の医学用語です。それと「振戦」は、振るえ・戦うと書きますが、意志に反して起きる「ふるえ」を意味します。

では、具体的に「ふるえ」とはどんなものか。ふるえる場所は、腕や首や声で、人によってふるえの場所、強さなどが違います。本態性振戦のふるえの特徴は、動いたときに、ふるえが起きることです。症状としては、食事で箸を持ち上げようとしてもできなかったり、文字を書こうとしてもうまくかけない、来客時にお茶を入れるのも大変な人もいます。そうした日常生活に支障が出る程、ひどくふるえが起きる人がいます。

さらに、抑えようと思えば思うほど、緊張で、症状は強くなり、心理面での影響が大きい。日本ではこの原因不明のふるえに悩む人が、およそ300万人いるとみられています。中高年に多い病気で、65歳以上の10人から20人にひとりが発症する身近な病気です。

★病気の原因は?

遺伝的要因が強いとも言われますが、まだ解明されていません。わかってきているところでいうと、からだの活動を高める交感神経が過剰に興奮すると、ふるえの幅は大きくなります。また、そのふるえを起こす交感神経に脳の一部が、関わっていることもわかっています。ただ、なんで脳の一部が、そうなってしまうのかは、詳しくわかっていません。

★原因不明の「ふるえ」の治療とは?

治療の中心は、まず薬となります。交感神経が興奮するとふるえが出るので、そのたかぶりを抑える効果のある薬を使います。ただ、この薬が効くのは12時間、薬の効くのは6・7割の人で、効果がない人も。また、薬を飲むことで脈が遅くなる副作用もあります。

薬などで十分な効果が得られない場合は、手術となります。手術では、頭のてっぺんの頭蓋骨に穴をあけます。そして、ふるえの交感神経に関わる脳の一部に針を刺し入れて治療部位を熱で固める。また、やはり頭蓋骨に小さな穴をあけ、脳の一部に電極を入れて電気信号の刺激を続ける治療も。その他、放射線のガンマ線ビームを利用した治療もありますが、問題の部分は、脳の真ん中にあるので、他の部分へ影響する懸念がありました。そうした治療しかなかったところ、近年で出てきたのが、身体を全く傷つけない治療です。

★身体を全く傷つけない治療とは?

MRI画像を使って治療する場所を決めて、超音波を脳の中の振戦、振るえの原因となる場所に超音波のエネルギーを1点に集中させ、患部を熱で固めるという治療です。この治療は頭蓋骨に穴はあけません。MRIを使って、集めて束ねた超音波を使って治療する、というところから、

この治療の名前は、FUS(ファス)といいます。噛み砕いて説明しますと、MRIの丸い機械の中に患者さんが入ります。MRIは脳などの画像診断を行うものですが、そのMRIを使うことによって、脳の中でふるえに関係する、問題の場所を正確に捉えます。

次に、問題の部分を焼くために超音波を使います。この時、ただの超音波ではなく、超音波を集めて束にしたビームを使います。患者さんはMRIに入るときに、専用のヘルメットのようなものを頭にかぶるんですが、そこには、ビームを出す、千個近くの端子がついています。

虫めがねで太陽の光を集めて黒い紙を燃やす実験と同じ原理で、千個近くの端子を1点に集中させて、問題の場所を狙い撃ちします。患部の温度が54度から60度までの温度で、直径2ミリ弱くらいを焼いてしまいます。

★患部を焼いても大丈夫?

MRIで温度変化を見ながら、ヘルメットの冷却装置で頭を冷やしながらゆっくり治療します。治療は局所麻酔だけで、患者さんは、ふるえが止まるのが自分でもわかります。その振るえの状態を治療の途中でチェックします。

そして、熱凝固する部位を最終決定していきます。大体1時間くらいの治療で、ビームを10から15回くらい当てて終わるので、患者さんの体への負担はありません。

ほかにもメリットがあって、従来の手術療法のように頭蓋骨に孔をあけて、頭を開く必要がない。そのため出血や感染症のリスクはありません。そして、なんといっても患者さんと医者が会話をしながら治療を行うので、なにか異変があった場合、すぐに中止するなど、対応しやすいことも大きなメリットです。

★今年から保険適用になった

FUS(ファス)は、今年の6月1日から保険適用になりました。治療の対象となる方は、現在、薬剤抵抗性を示す方、あるいは、何らかの理由で薬の内服を継続することができない人などです。この治療の対象になるのは少なくとも200万人はいると推定されます。これまで患者さんが治療費およそ200万円を全額自己負担する自由診療が行われてきましたが、今回の保険適用により、患者さんの金銭的負担が大きく軽減することが期待されます。

また、現在、FUS(ファス)は、これまで国内でわずか9つの施設でしか行われてこなかった。それが、今回の保険適用によって、この治療を導入する施設が増えるだろうと思われます。対象となる患者さんが200万人入ると言われていますので、増えないと患者さんは困ります。頭蓋骨に穴をあける手術と言われ、手術に踏み切れない患者さんが少なくないのですから。

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191223080130

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)


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