今年の冬は、寒くなったかと思うと急に暖かくなったりして洋服選びが難しいですが、きょうは新しい防寒用の生地のお話。このジャケットの生地がその新しい生地なのですが、一見すると普通のウールにしか見えませんよね。この生地のどこに防寒の秘密があるのでしょうか?
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!1月8日(水)は、『冬でもジャケットだけでOK?! 羽毛を挟み込んだ生地!』というテーマで近堂かおりが取材をしました。
★ダウン(羽毛)をサンドイッチしてひとつの生地に!
このジャケットの生地、ウールにしか見えません。
触ってみると、結構、伸びます。つまりストレッチ性が高い。これが最近の紳士服のスーツの流れ。着ていてとても楽。でもそれは防寒ではありませんよね。ではこの生地のどこに防寒の秘密があるのか?開発したのは株式会社コゼットクリエーションという会社。企画部長の西宮裕巳さんにお話をうかがいました。
- 西宮裕巳さん
- 「薄い生地と薄い生地の間に本物のダウン(羽毛)を均等に敷いて、それをサンドイッチしてひとつの生地にした形です。モコモコはしていないです、ぺったんこになっています。見た感じ、中にダウンが入っているとはたぶん全然分からないと思います。ぺったんこになっているとはいえ、多少の空気が中に入っているので暖かいということです。」
この生地の中にダウンが入ってるの?と私もびっくりしてしまいました!【ダウンファブリック】という名前の生地なのですが、実は、この生地、2枚の薄い生地をボンドで貼り合わせて1枚の生地にしてある。(ボンディングと呼ばれるものです)生地全体の厚さは1ミリ~2ミリ。そのわずかな間に、水鳥(みずどり)のダウン(羽毛)が挟み込まれているんです!ダウンを95%、羽根(フェザー)を5%混ぜ合わせて、羽根の固い部分は砕いたり取り除いたりして、それを生地と生地の間に均一に敷き詰めてむぎゅっと挟んである。
少ししか羽毛が入っていないんじゃないの?…と思ったら、結構たっぷり入っているんです!しかし、羽毛を均一の厚みと量にして何百mにもなる生地の間に敷き詰めていくのは、これまではできなかった。それを3Dプリンタの技術を応用して可能にしたそう。(3Dプリンタの技術がどう使われているのか詳しく聞こうとしたが、そこは企業秘密!)
でも、こんなに羽毛をぺったんこにしたら暖かくないんじゃないの? と思ったら、普通のダウンジャケットやダウンのコートには及ばないものの、同じ厚さのウール100%素材の2倍の保温性がある、というので、これまたびっくり!
★衝撃の新素材でコートの要らないスーツ!
この生地に目をつけて、コートの要らないスーツを作っちゃったのが、株式会社アバハウスインターナショナル。開発を担当した渡邊智広さんにこの生地を手にした時の印象をお聞きしました。
- 渡邊智広さん
- 「初めて見たときは衝撃の新素材という感じでした。見たことはなかったです。今まではスーツを着てその上に上着を着なきゃいけないというスタイリングでしたけど、みんなラクしたかったと思うんですよね。重ねてモコモコで動きづらくて、電車の中は結構暑かったらしてて。このスーツに関しては1枚ですんでしまうところが付加価値につながっていると思います。今までにないところが非常に強いと思います。」

こちらがABAHOUSEのジャケットとパンツです!
通勤や外回りのときに厚ぼったい上着を着たり脱いだりするのは確かに面倒ですよね。それを軽減できるのが、このジャケットとパンツ、ということなのです。さすがにき昨日のように寒いと、これ一枚では寒いですけど、その上に羽織る上着は 薄手のものでいいかも。
★ほんとにあったかいのかな~?!
でも実は、このスーツを作ったアバハウスの中にも、本当にこのスーツ、あったかいのかな~?と内心思っていたんです、とおっしゃる人がいたので、お話を伺いました。事業部副部長の米山大介さんのお話。
- 米山大介さん
- 「作りながら、実際暖かいのかなと思うところがあったんですけど、これが実際に着てみると軽くて非常に暖かいんですね。今まではウールのスーツにモコモコのミドル丈のアウターを着てました。電車に乗ると暑いですし、脱いだときにかさばりますし、ビジネスマンにとってスマートじゃない。ちょっと身軽に着られるという感じではいいかなと思います。」
この生地、保温性がある一方で、熱がこもりすぎない工夫もしてあるそうで、透湿性も高い生地。米山さんは、満員電車の中で着ていてもそれほど暑くなかった、とのことでした。
とはいえ、疑り深い我々現場にアタックチームは、「でも米山さんもアバハウスの方だから、悪いことは言わないのは当たり前だよなぁ~」と思ったので、
私も寒空の下コートを脱いで、この新素材を使ったスーツ1枚だけ羽織って、出てみました(笑)。
- 近堂体験レポート
- 「風が吹いてすごく寒いです。じゃあ、ちょっと着てみます。あ? あ! なんか面白い感じがします。薄い空気の層を感じるって言ったらいいのか…。しかも結構、暖かい。」
米山さん、疑ってごめんなさい(笑)!本当ですね。さすがにダウンジャケットよりは寒いですけど、例えば会社から少し離れたお店にごはんを食べに行こうと言われたら、コートを着なくてもいいかな…という感じでした。
★ダウンが生地になって期待も高まる!
生地を開発したコゼットクリエーションでは、今は服が売れない時代と言われる中で、この新しい生地に可能性を感じているようです。西宮さんのお話。
- 西宮裕巳さん
- 「デザインも広がっていくので、アイテムも広がると思うんです。今まではダウンというとジャケットとかコートというふうに限られたアイテムになっていますけど、これがオールアイテムにという形になりますね。」
いま業界では、なんとか服を買ってもらおうと、【機能性スーツ】の開発にしのぎをけずっている。そんな中で【羽毛】や【2枚の生地を貼り合わせるボンディング】という技術、そして【ストレッチ素材】といった、既に存在していたものを組み合わせて、いままでにないあたらしい生地を作った。生地の開発は奥深いですね。しかも、この生地、保温性が高い、透湿性に優れている、ストレッチ性がある、などの特徴のほかに、お家で手洗いができるんです!!
いわゆるダウンジャケットのようにクリーニングに出さなくてもいい、というのは手軽で扱いやすいですよね!そういう新しい生地が生まれることで、新しい消費を生むことができるのでは、と期待が高まっているのです。(婦人物も早くできるといいな~。)

【ダウンファブリック】という新しい生地で作られたABAHOUSEの商品
リーセンシィ オブ マイン アバハウス 【左】FLEX 3Dダウンファブリック ジャケット 42000円(税抜)【右】FLEX 3Dダウンファブリック パンツ 23000円(税抜)

近堂かおりが「現場にアタック」で取材リポートしました。