■格闘ゲーマーって「読み合いが楽しい」と言いながら読み合ってくれないと思ってた
「マイゲーム・マイライフ」のゲストにゴールデンボンバーの歌広場淳さんがやってきました。歌広場さんは大のゲーム好きで知られ、その範囲はアナログゲームにまで及びます。特に人狼ゲームがお気に入りで、プライベートで人狼ゲームのプレイ動画も視聴しているほど。過去にはイベント『アルティメット人狼』に出演していました。また、クイズ好きでもあり、ゴールデンボンバー1の雑学王とも言われています。
今回の放送は、知識欲と探求心、好奇心が旺盛な歌広場さんらしさが随所にちりばめられたトークだったと思います。歌広場さんが最も好むゲームジャンルは格闘ゲーム。格ゲーにハマったのは、“あること”を知りたいと思ったのがきっかけでした。
SONY DSC歌広場「格闘ゲームは『読み合いが楽しいよね』ってみんな言うんですよ。“読み合い”というのは、この技を出してくるならこの技を出そうとか、相手が投げに来るなら自分はジャンプして避けよう、とか」
宇多丸「瞬間的な、コンマ1秒レベルの勝負ですよね」
歌広場「“読み合い”って要は言葉を変えると、コミュニケーション・会話、ですよね。お前がこういうボケをするなら、俺はこういうツッコミをしよう、とか。そういうのが楽しい、ってみんな言うんですよ、口では」
宇多丸「口では(笑)」
歌広場「でも、(以前この番組内で、宇多丸さんが)実際に格闘ゲームをやられたとき、会話してました?」
宇多丸「ボコボコにやられました(笑)。佐藤かよさんがいらしたときですよね。あれは『鉄拳7』かな? (佐藤かよさんと)『鉄拳7』をやったんですけど、もうね、逆ですよね。コミュニケーション不能感が(笑)」
歌広場「そうそう、そうなんですよ。格闘ゲーマーって口では『読み合いが楽しい』って言うのに、読み合いする気ないんですよ!」
宇多丸「ははははは」
歌広場「子どもの頃、開幕から何もできなくて楽しくなかった記憶があって。でも、あることに気づいてから格闘ゲームって異様に楽しいなって思うようになったんです」
宇多丸「あること?」
歌広場「それは、『相手が言ってることを俺が理解できていないだけだ!』と」
宇多丸「ああ、だからやっぱり、高度な人同士のあれが(コミュニケーションが)」
歌広場「そう。ベジータと悟空の戦いを見て、何が起こってるかわからないって言ってるのと同じで。ヤムチャが見てもわからないけど、ピッコロが見たら『ふ、なるほどな、そう来たか』となるわけで」
宇多丸「神々の視点がね」
歌広場「それってすごく切ないなって思ったんです。読み合いとかコミュニケーションとかが楽しいってみんな言ってるのに、そもそも自分は会話に参加できていないわけですよ!」
宇多丸「強い人同士でやってると、楽しい~ってなるけど、圧倒的に強い人が一人しかいなくて、周りが弱かったら、あれですよね、『ちはやふる』の若宮詩暢が『一人でかるた取ってるみたいだった』と言っていたように」
歌広場「そう! そうです。圧倒的に強い人とそうではない人が一緒にやるときは、情けが必要なんですよ。だから、これは情けが必要ない段階まで自分を強くしなきゃ、と思ってハマりました」
宇多丸「ああ~、俺も対話できるようになりたい、っていう」
歌広場「結局、(対話できるように)なりましたね」
ほかにも、ゲームや映画などの作品に触れる際に、「作り手の意図を考える」といった趣旨のことをしばしば発言していました。
とにかく一貫して、人との対話を欲している歌広場さん。ゲームの対戦相手とも、作品のクリエイターとも、プレイしながら対話をしているのだと思いました。圧倒的な強者と対峙して、「自分はその会話に入れていない」という発想になれる人って、なかなかいないのではないでしょうか。私だったら、ボコボコに負けて、むくれて、「自分には向いてない!」とコントローラーを投げるに違いありません。対戦ゲームが苦手なばかりに、いつも弱いCPUをボコボコにすることで満足していた自分を恥じたのでした。
■今回のピックアップ・フレーズ
歌広場「楽器を弾くための練習とか一切必要ないんで」
宇多丸「その分の時間が(ゲームに)あてられるんですね」(笑)」
歌広場「楽器を持つ時間をコントローラーに変えているんで」
文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)