海岸に設置されている「テトラポッド」が今、大きな変化の時を迎えているということ。その現状と最新事情について、5月21日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
テトラポッドは、正式には「消波ブロック」という名称です。台風などで引き起こされる大きい波の力を弱めて、防波堤に強い力が直接当たらないようにするために設置されているものですが、5月14日の月曜日、「土木学会」で新しい消波ブロックが表彰されたそうなんです。まずは、日建工学株式会社・海洋事業課の西村博一さんのお話です。
★環境に優しい「環境活性コンクリート」
- 日建工学株式会社・海洋事業課 西村博一さん
- 「『環境活性コンクリート』という名前なんですが、この度、平成29年度の土木学会環境賞を受賞しました。コンクリートにアミノ酸の一種のアルギニンを入れて、アミノ酸がコンクリートから出てくることによって、海藻とかコケとかが生えやすい、環境にやさしいコンクリートを作ったということです。
消波ブロックというと防災だけのイメージだが、海の中に入れるので防災と環境を一体にしたようなもので使っていきたいと思っています。」

日建工学の「環境活性コンクリート」。コンクリートにアミノ酸を混ぜると、藻の生長を早めることがわかりました(写真:日建工学 ホームページより)
消波ブロックにこのアミノ酸入りのコンクリートを使うことで、コンクリートの強度はそのまま、藻類の成長スピードが5倍になるということです。すでに全国の海や川、80ヶ所に設置されていて、海の環境を壊さないで波の勢いを消せるということで、土木学会環境賞を受賞しました。
★消波ブロックの更新時期に突入
そんな中、実はテトラポッドを代表する消波ブロックは、大事な局面を迎えているんです。株式会社不動テトラの柏田雄一さんのお話です。
- 株式会社不動テトラ 柏田雄一さん
- 「テトラポッドというのは、元々1949年にフランスで誕生し、昭和30年代から急速に日本の沿岸域で、高度経済成長に伴って多く使われるようになった。しかしながら、設置してから数十年経ってしまうと、コンクリート自体の劣化、それと地盤の沈下、ブロックの形状自体も砂利と擦れて磨耗してしまい、機能が弱まってしまうということが現実に起こっています。
具体的に更新需要は出て来ておりまして、過去に設置した部分に新たに設置するなど、工事はもう出て来ているところです。」
日本中で一気に消波ブロックが設置された高度経済成長から数十年、いまが取り替えたり追加したりする更新時期で、だからこそ新型が誕生しているという面もあるようです。

不動テトラの「テトラポッド」(図:不動テトラ ホームページより)
ちなみに、テトラポッドはよく見る4本足のブロックのことを指しますが、日本で初めてテトラポッドを設置したのは先ほどの不動テトラ。テトラポッドは不動テトラの登録商標で、数ある波消ブロックの中でもやはり主力商品ということです。
★消波ブロック、120種類以上もあった
そして、実はそのテトラポッド自体も進化しているということです。
- 株式会社不動テトラ 柏田雄一さん
- 「波の厳しいところで使用するためには、実はテトラポッドの形状ではなく、もう少し違う形状なら少ない重量で波に対抗できるのではないかと考え、新しいタイプのブロック『テトラネオ』を開発した。テトラネオは足の先に突起があり、組み合わせた時の隙間が変わる。隙間がより大きくなることで使用するコンクリートの量を減らすことができる。
当然ブロックを使う工事はほとんどが公共工事。税金を使うのでコストを意識した開発が行われています。」

不動テトラが新しく開発した「テトラネオ」(図:不動テトラ ホームページより)

消波ブロック一覧。あくまでも一部です(日本消波根固ブロック協会 ホームページより)
テトラポッドの足の先に突起をつけた新型ブロック「テトラネオ」。突起を付けることでより大きな隙間が生まれ、うまく波の勢いをおさえることができるそうです。
実は、設置する場所や環境、どのくらいの強さの波がどのくらい来るのかを計算して、その場所に合ったブロックを使おうということで、立体型・平形・階段型など、各社で消波ブロックがどんどん開発されています。なんとその数120種類以上!適材適所、現場に合わせたブロックを入れ替えていこうということで、消波ブロック業界では開発競争が起きていました。
★次は世界進出!日本の消波ブロックはすごかった
そして最後に、日本国内の取り替えが終わった後の話を伺いました。再び、不動テトラの柏田さんのお話です。
- 株式会社不動テトラ 柏田雄一さん
- 「日本ほど消波ブロックがいろんな形に発展・進化していったのはあまりない。海外にこれだけのバリエーションは例がないので、これから発展途上国で新しく港や沿岸部に道路を作るなど、日本がかつて経験したような整備を行う国においては日本で進化したブロックを取り入れてみたいということになると思います。」
日本は、消波ブロックの種類も作る技術も、おそらく世界一。元々フランスから来たものを日本独自に改良して、今度は海外で使用される事例が増えそうです。特にアジアやアフリカで、港を新たに開発する場合に大きな需要があるということです。

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!