外反母趾は、足の親指が変形するなどして痛くなる病気で。女性に多くみられます。主に、ヒールのある幅の狭い靴を履き続けるなどして起こりますが、ヒール靴を履かない人や子どもが発症するケースもあります。重症化すると、手術することも必要になりますので、そうなる前にセルフチェックをして予防したりすることが重要です。
そこで、9月30日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、外反母趾のセルフチェック方法や治療法などについてお伝えしました。
★外反母趾の日本での歴史
日本で初めて外反母趾の存在を紹介したのは、陸軍の軍医のトップで作家の森鴎外で、ヨーロッパの情報を伝えました。当時の日本の履物は、まだ下駄が主流だったので、外反母趾で悩む人はほとんどいなかった。しかし、日本でも戦後、革靴の製造の増加とともに、急激に外反母趾になる人が増えました。
★外反母趾とは?
そんな外反母趾は、その名の通り足の母趾=つまり親指が、小指側へ反っていく病気のこと。エックス線撮影で、親指の骨が小指側に20度以上曲がっていれば外反母趾と診断されます。
外反母趾は正確な統計はありませんが、圧倒的に女性が多いのが特徴です。女性の社会進出などもあり、靴を履いている時間が長くなったことで、患者数が増えてきているのではないか、と考えられます。
そんな外反母趾の原因ですが、つま先の細い靴、ハイヒールを履くなどして足の親指と、人差し指の間が狭くなると、親指の先端は隣の指に向き、親指の付け根の骨は逆に押し出される。すると、親指の付け根の付近にある筋肉が働けなくなって、外反母趾になってしまいます。
★外反母趾の症状は?
はじめの頃は親指の付け根の部分が指先とは逆方向に突き出てきて、真っ赤に腫れてきます。そして足の親指に靴が触れたりすると飛び上がるほどの痛みが出てきます。そのうち、何もしなくても痛みが続くようになります。
ただ、気をつけていただきたいのは、必ずしも痛みがあるわけではない、という点です。靴を履いて外出する機会の少ない人は、外反母趾と気づかないこともあります。重症のケースでは、曲がった足の親指が、人差し指の上や、下に食い込むほど変形することも。こうしたことにならないように、まず自分が外反母趾になりやすいか、なりやすくないかここをチェックすることも大切です。
★外反母趾になりやすい人とは?
まず外反母趾になりやすい「足の形」の人がいます。それは、「足の指の中で親指が一番長い」人。人の足の形は大きく3種類に分かれ、「親指と人差し指の長さがほぼ同じ」人や、「足の指の中で、人差し指が一番長い」人もいますが、「足の指の中で親指が一番長い」人が外反母趾になりやすいです。なぜかというと、足の親指が長いと、靴の先に親指がぶつかってしまって、圧迫されそれが変形につながるからです。
ただ、それ以外の足の形でも、外反母趾にはなります。それが外的要因=靴の形です。それがヒール靴でかかとが高い靴は、靴の中で足が前に滑って指先が圧迫され外反母趾の原因に。
一方、ヒール靴を履かない人や子どもが発症するケースもあります。土踏まずがつぶれている扁平足の人は、体重がかかった時に足の幅が広がる分、爪先がすぼまって親指が小指側に曲がりやすくなります。親指が人差指より長い人や、足指の関節や靱帯が軟らかい人も、靴の影響を受けやすく要注意。思い当たる人は外反母趾のセルフチェックをしてみてください。
★外反母趾のチェック方法
いすに座って両脚を伸ばし、素足になって「パー」の形をつくります。手でジャンケンの「パー」をつくった時と同じように、足の親指が外側に開けば大丈夫ですが、「パー」が作れない場合は、既に変形が始まっていて、外反母趾が起こる可能性が高い。
★外反母趾の治療
外反母趾になった場合は治療になりますが、外反母趾の治療は保存療法と手術です。保存療法には「運動療法」と、装具を使って治療する「装具療法」があります。
★運動療法とは?
まず運動療法ですが、外反母趾がある場合、多くは足の指の関節が硬くなって、足の指に力が入らなくなってきます。そこで、整形外科の医師や、理学療法士の指導のもと足の指を動かすトレーニングを無理のない範囲で行います。
いろんな方法がありますが、その1つに「足の指のストレッチ」があります。
方法は、
- 床や椅子に座って右足の前方を右手で持ち、左手で親指を持ち、親指を左側に引っ張り、5秒間保ちます。
- 続けて人差し指を持ち、引っ張りながら足の裏側の方向に曲げます。
これを10回1セットとして1日3セット行います。
そのほか、ゴムバンドを使って両脚の親指に引っ掛けて、引っ張り合う体操や、両脚を使ってタオルをたぐり寄せる運動などもあります。
★装具療法とは?
「装具療法」ですが、こちらは運動療法で足の指の関節を柔らかくした後に、装具を装着します。装具はいろんな種類がありますが、例えば親指と人差し指の間に挟んで親指の位置を矯正するトースプレッダーという装具があります。
このほか、靴の中に入れて使う中敷のような足底板というものがあります。足底板は、土踏まずを持ち上げて、親指の付け根の骨を支えることで、足の縦と横のアーチを矯正することができるものです。医療機関や薬局などで購入することができ、医療機関で購入する場合は、健康保険が適用され、1年半に1回、自分に合ったものを作ることができます。
運動療法や装具療法でも痛みが改善しない場合、歩行困難などで生活に支障がある場合は手術になります。
★外反母趾の手術とは?
手術は、重症度や患者さんの状態に応じて選択されます。例えば、飛び出している親指の根元の骨を削って、痛みが出ないようにしたり、親指の骨を切って、人差し指の方に近づけるように移動させる方法などがあります。
★外反母趾は予防が大切
こうした手術にならないためにも、やはり予防は大切です。特に日頃履く機会の多い靴の選び方として「つま先に指1本の余裕がある」ものや、「横幅が広すぎない」もの、「足の甲やかかとがしっかり固定できるもの」を選ぶようにして下さい。
普段から予防として、靴をこまめに履き替えるのも良いでしょう。通勤の時はウォーキングを兼ねてスニーカーで出社する。会社内では動きやすい靴にする。ハイヒールはなるべくはかないようにする。どうしても必要な時だけはくようにしましょう。