子宮頸がんは20代から30代の若い女性にも多い病気です。日本では子宮頸がんに罹る率、そして死亡率ともに増加しています。これは、先進国の中では日本だけ、ということなんです。
12月9日(月)松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、子宮頸がんについて取り上げました。
★子宮頸がんとは?
子宮のがんには、2つあります。1つは、子宮の本体部分に発症するがんを子宮体がん、そして、子宮の入り口部分=「子宮頸部」に発症するがんが子宮頸がんです。
2017年のがんの統計によれば、女性が罹るがんの中で、子宮がん全体は、罹患率5位、死亡率8位ですが、15歳〜44歳までの若い年代では、罹患率、死亡率とも乳がんについで2位となっています。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウィルス「HPV」というウィルスの感染により引き起されます。そして、子宮頸がんは両親から引き継ぐ遺伝的な要因での発症は、ほぼないと考えられています。
ヒトパピローマウィルスは性行為によって感染し、女性のおよそ8割は生涯に1度は感染するウィルスです。ただ、これは、ほとんどの人は自然に治るものです。しかし、およそ1割の人は感染が持続して、さらにその一部ががん化するといわれています。
★子宮頸がんになってしまったら?
子宮頸がんは進行の具合によって、11のステージに分類され、それぞれ治療方法が違います。
例えば極めて早期のがんのステージ0では、がんが子宮頚部の表面部分に留まっている状態で、一般的には、子宮の入り口部分を円錐状に切除する手術で済み、子宮を残すことができます。
ただ、少しがんが進んだステージ3段階目、がんが子宮頚部の表面から3~5ミリまで潜った状態となると子宮をすべて摘出しなければならなくなります。11段階あるうちの3番目で、早くも子宮を摘出しなければならない、ここが辛い所です。
★子宮頸がんの予防=ワクチン
子宮頸がんの予防的措置としては、ワクチン接種と検査の2つがあります。
まず、ワクチンについて説明すると、子宮頸がんは、ほとんどがヒトパピローマウィルスの感染が原因なので、がんにならないためには、このウィルスへの感染を防ぐことが最も効果的です。
現在のところ、感染してしまったヒトパピローマウィルスを治療する薬はありませんが、感染を予防するためのワクチン、一般的に「子宮頸がんワクチン」と呼ばれるものがあります。
どんなワクチンかというと、ヒトパピローマウィルスは、いろいろな型があるのですが、子宮頸がんになりやすいと言われている2つの型を防ぐワクチンと、さらに広げた4つの型を防ぐワクチンの2種類です。
代表的な2つの型は、子宮頸がんの原因のおよそ65%を占めていて、さらに20代から30代でみると80から90%を占めているとされています。そのため、まず、この2つの型のヒトパピローマウィルス感染を防ぐワクチン、そして、型をさらに広げて4つの型の感染を防ぐワクチンの2種類で対応しています。
このワクチンは、どちらも日本の定期接種として承認されていて、12歳から16歳の女性が対象で、無料で接種できます。ただ、この定期予防接種は、実施する自治体から通知が送られてこないため、摂取を希望する場合は、各自治体へ、自分から申し込む必要があります。各自治体のホームページの予防接種のページで、その情報を確認できます。
★議論が続く子宮頸がんワクチン
日本では子宮頸がんワクチンは、社会問題化し、広がっていない、という問題があります。子宮頸がんワクチンの接種後に、さまざまな症状を訴えた人が出たからです。その症状は、慢性の痛み・しびれや全身の脱力などで、日常生活が困難な方も出ています。
これについては、その後、厚生労働省と専門家が追跡調査や国内外のデータを分析しました。その結果、ワクチンの副作用として騒がれているような症状については、ワクチンを接種していない人にも、同じように起こり、頻度も変わらないと結論付けています。いわば副作用が多発するわけではないとお墨付きを出した形で、その意味では、子宮頸がんワクチンによる予防というのは、有効な選択肢となっています。
ただ、あれほど社会問題化した後で、まだ安全の印象が広がっていない中、心理的に不安を感じて、ワクチンを受けにくい、という方も多いのが実態かもしれません。
確かに、すべてのヒトパピローマウイロスに対応しているわけでもなく、予防率も100%でもないワクチンを摂取するというのはハードルが高いでしょう。
★子宮頸がんの予防=定期検診
その場合には、やはり検査が重要、ということになります。検査は一般的には、子宮頸部の細胞を採取して、細胞に何らかの異常がないか検査します。この定期検診の受診率を高めれば、かなり高い確率で、予防できます。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウィルスの感染が原因となりますが、多くは感染しても、自然と治り、がんになる確率は1000分の1と言われています。さらに感染から、組織が変化してがんに進行するまで、実は、数年はかかるのです。そのため、定期検診をしていれば、がんになる前の段階で発見でき、処置できる病気です。
★子宮頸がんの検査とは
20歳以上の女性は、2年に1回の頻度で子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。今、日本では定期検診の受診率は20%程度で、20代に限れば、5%程度。欧米では60~85%と言われているので、あまりにも低いです。
検査は、何も異常がなければ2年に1回、感染のリスクがあれば1年に1回、受ければ大丈夫。早期発見できれば、子宮を残した形の治療ですみますので、まずは、定期検診を受けて下さい。
実は、現在、ワクチンで子宮頸がんが防げる割合は6〜7割程度とされています。一方で、検査でがんになる前の状態を発見できる割合は、7〜8割とされています。定期検査は、必ずしもワクチンには劣らないものですので、検査率を上げることが大切です。
★ワクチンと検査の今後
最近では、細胞に変化が起きる前、ウィルスに感染しているかどうかを調べる検査も出ています。日本ではまだ定期健診として認められていませんが、この検査と細胞の検査を合わせると、%の確率で、がんになる前に見つけることができて対応できると言われています。こうした新しい検査も、公的に認められるといいでしょう。
もちろん、ワクチンと定期検診と両方行えば、その方が効果が高くなるのも確かです。社会問題となったワクチンですが、みんなが安心して受けられるよう、情報公開の仕組みなども見直していく必要がありそうです。