キャサリン・マンスフィールドは、1888年、
ニュージーランドの裕福な、銀行家の家に生まれました。
子供の頃から、音楽と文学が得意で、9歳の時には、もう小説を書いたのだそうです。
そして、19歳の時、親の反対を押し切って、イギリスに渡ります。
この時、抱えていたのは、チェロだったそうですが……
その後、いくつも波乱の恋を繰り広げました。
相手は、ヴァイオリン奏者、音楽教師、ロシアの青年、フランスの詩人……
そして、妊娠や流産、離婚など辛いことを経験しますが、
編集者で文芸評論家の男性と知り合ってから、次々と珠玉の作品を、発表します。
しかし、結核を患い、1923年、わずか34歳の若さで亡くなりました。
チェーホフに深く傾倒した彼女は、透明感あふれる繊細な短篇を生涯に90篇も残したのだそうです。
『幸福』は、1918年に発表された彼女の代表作です。
繊細で、多彩な読みができる小説ですが、文庫本で、わずか二十数ページの短篇なので、
是非、原作を手にとって、細部まで味わってみて下さい。
「幸福」
バーサは、夫、可愛い娘、知的な友人に囲まれ、何自由なく暮らしている。
その心を象徴させるかのように、庭の梨の木が満開に咲いていた。
そして、彼女は、その梨の木を媒介に、
最近、魅かれているミス・フルトンと一気に、心を通わせていく。