日本人の死亡原因の第2位は「心疾患」、第4位は「脳血管疾患」なのですが、これらはいずれも血管の病気です。そんな血管の病気の死亡者数ですが、実はがんの死亡者数に迫っているのです。この血管の病気の主な原因は、動脈硬化なのです。ただ、この動脈硬化、よく聞くとは思いますが、なんとなくしかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
そこで、9月10日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、血管の病気の原因、動脈硬化について取り上げました。
★血管の構造と働き
私たちの体は、血管を通じて血液が糖分や酸素など生活に必要なものを運び込み、その一方で、炭酸ガスや体内でできた老廃物を運び出して処理する仕組みになっています。血管は、血液に接している内側から「内膜」「中膜」「外膜」の3つの層からできています。これが血管の構造です。
★動脈硬化とは
この血管=主に動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなることを動脈硬化といいます。動脈硬化に深く関わっているものの1つが脂質の一種=コレステロールです。このコレステロールが血管の「内膜」に蓄積し、次第に脂肪分が沈着して、血管が狭くなり、血栓、潰瘍をつくる原因になります。これが原因になり、狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤、腎梗塞、手足の壊死などが起こります。
★自覚症状はあるのか?
自覚症状はありません。年をとるごとに、内膜の中にたまったコレステロールを中心とした脂肪沈着は、やがて内膜に染み込んで大きくなり、血管の内側に向かって盛り上がってきます。これは、20歳から30歳ごろから始まるので、50歳から60歳になると血管自体は狭くなってしまいます。
その結果、スムーズな流れだった血流と内膜の間に無理が生じ、血の塊(血栓)ができます。この塊で血管が詰ると、急性心筋梗塞などの発作として、初めて症状が現れるようになります。ですから、症状が自覚できるようになった時は、すでに20年から30年年に及ぶ「動脈硬化の進行」があったと考えなくてはなりません。硬化は無症状のまま進行することをしっかり覚えておいてください。
★血管の状態を知る方法は?
まずは、血液検査で、空腹時の血液中の脂肪の数値を図ります。目安となる数値は3つです。
HDL(善玉)コレステロール値、LDL(悪玉)コレステロール値、中性脂肪値です。この3つの数値が1つでも基準値から外れていると、脂質異常症の診断基準となります。その場合は、「頸動脈エコー検査」を受けましょう。
★頸動脈エコー検査とは?
この検査は、頸動脈にゼリーを塗って検査機器をあて、頸動脈の状態を検査するというものです。この検査は、痛みも被ばくもなく、簡単に血管の状態を診ることができます。こうした検査で、動脈硬化が認められた場合もそうですが、動脈硬化になる前に予防策をとることが重要となってきます。
★動脈硬化の予防方法は?
まずポイントとしては、糖尿病に注意することです。糖尿病は動脈硬化を促進させてしまいます。中でも、隠れ糖尿病といわれる人たちは、注意が必要です。隠れ糖尿病というのは、空腹時の血糖は正常なんですが、食後の血糖値が高い人です。食後高血糖は動脈硬化の大きな要因となります。これを防ぐためには、パン、麺類などの炭水化物を取り過ぎないことや、糖質の吸収を抑える食物繊維の多い食材と一緒に食べることがポイントです。
また「週に5日、青魚を食べる」ことをお勧めします。青魚にはEPAやDHAが豊富に含まれています。この2つの成分には血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす働きなどがあります。すると、血液がサラサラになるので、脂質異常症や高血圧が改善され、動脈硬化も抑えられます。
そして、高血圧を抑えるために、塩分は控えめにしましょう。高血圧ではない人も、塩分は1日9グラムまでにするのが勧められています。 できれば高血圧ではない人も1日6グラムがベストといわれています。塩分を減らすにはテーブルの上にしょうゆや塩を出さないことです。なければ手が伸びません。
また、刺身や寿司を食べるときも、しょうゆをつけ過ぎないことです。箸の先にしょうゆをつけて、それを魚の上に垂らします。すると、1滴程度になります。それくらいでしょうゆは十分です。
★食事以外の対策は?
適度な運動です。ウオーキング、水泳、サイクリングなど、軽い有酸素運動で筋肉をある程度つけることで新陳代謝が活性化し、体も温まり免疫力がアップします。また、運動量は増えるほど善玉コレステロールが増えて、血管の掃除がしっかり行われます。
十分な運動をしたあとはしっかり睡眠と取ることです。夜の睡眠は7時間~7時間30分程度が理想です。体の代謝リズムがつくりやすくなって、動脈硬化予防にも貢献するだけではなく、多くの生活習慣病を改善します。食事、運動と共に健康生活の3本柱の3本目が睡眠なのです。
もちろんストレスは生活習慣病の悪化に大きく関係しています。脳の一定部分ばかり使っているとストレスを感じやすくなるため、音楽を聴いたり、笑ったりすることで、脳のほかの部分を活性化して、ストレスの発散に結びつけることも大切。ご自分にあったストレス発散法を持つべきです。

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫